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竜飛岬君からのメール [たまごの本棚]

古い友人の竜飛岬君から次のようなメールをもらいました。竜飛岬君の許可を得て、以下に転載します。(♪ご覧、あれが竜飛岬、北のはずれと~ 見知らぬぅ人ぉが指ぃをさす~♪)


すっかりご無沙汰しているが、元気か?久しぶりにメールするけれど、特に用向きがあるわけじゃない。最近読んだ本のなかで一冊、面白いものがあったので君に紹介しようと思ってのこと。まぁ、本といえばアレコレかまわず読み散らす君のこと、もうとっくに知っていて読み終えているかもしれないが。

最近の僕の生活のなかで音楽を聴く時間はごく小さい割合に属する。これは君にとって少し意外に響くかもしれないが、実際そうなんだ。

かつて学生だった頃、よく一緒にコンサート通いをしたね。まぁ、僕の趣味に付き合ってもらっていた、ということだけれど。東京文化会館やサントリーホールに足繁く通ったものだ。途中、渋谷にオーチャードホールができたりして、喜び勇んで二人揃って渋谷詣でをしたりしたね。

あの頃、共通の友人で、やはり音楽好きだったDOS/V君が僕らに問いかけてきたことがあったね。「君たちは一生ずっと音楽を聴くつもりか?」と。もちろんDOS/V君自身の答は「イエス」に決まっていたのだが、そのとき君は言葉に窮して、「う~ん・・・?」と唸ったきりだった。要するに君は本当に音楽好きというわけではなかったんだ。僕に引き摺られるようにしてコンサート通いをしていただけ、でね。君がそのことを覚えているかどうか知らないが、僕ははっきり「イエス」と答えた。「音楽なしの生活なんて考えられてない!」、とね。

ところが最近、というかここ数年、そういうわけではなくなった。僕はほとんど音楽を聴かなくなったんだよ。なんと言ったらいいか・・・・とにかく耳障りでね。もちろん、コンビニやテレビで流れている当節流行の曲を耳にすることはあるよ。あれは不可抗力だからね。でも、自分から積極的に「聴く」ということはなくなった。当然、山のように持っているCDや古いLP盤も、たな晒しのままだ。

その僕が最近読んだ本というのが、こともあろうに『カラヤンとフルトヴェングラー』なのだから、話は妙に聞こえるかもしれない。

当節は新書ブームが続いていて、どの出版社でも新書を手掛けているようだけれど、この本は幻冬舎から出た新書だ。「幻冬舎まで新書を!?」と君は驚いたかもしれないが、僕もやはりそうでね、見城徹さんに敬意を表しつつも、これまで一冊も読まずにきた。この本が出ていることも知っていたよ。知っていたけれど、カラヤンとフルトヴェングラー(僕にとっては「フルトヴェングラーとカラヤン」という順だが)の確執はつとに有名だし、なにしろ音楽そのものを聴かなくなっているのだから、こういう本を読んでも仕方ない、と思っていた。

それがあるキッカケでこの本を手にすることになったんだ。キッカケというのはあるブログだ。君はきっと知らないだろうが、楠城華子という人がいる。芸能事情に疎いのは、僕も君と大差ないから、彼女をなんと呼んでいいのかわからない。女優なのかモデルなのか、要するにタレントなのか?旧帝大の出身なのだそうだが、この履歴が芸能界で大成するに必要充分条件というわけではないことは君にもわかるだろう?イロモノ、としての意味くらいはあるかもしれないが。だから芸能界にいる以上、この履歴に殊更大きな価値があるわけでもない。

ともかく、その彼女がブログを書いていて、僕はときどきそれを拾い読みするのだが、そう書けば、また君はちょっと驚くかもしれない。僕はこれまで芸能人にそれほど興味があったわけではないからね。しかし、君も中森明菜のファンであったりした以上、僕の気持ちを少しはわかってくれるんじゃないか?要するに芸能界一般に興味がなくとも、その一部分に惹かれるということはある、ということだ。

実際、僕は彼女のことをあまり知っているわけでもなくて、半年ほど前、たまたま本屋である雑誌を見かけてね、それはいかにも僕と無縁のバイクだかスポーツだか、ともかくアウトドア系の雑誌だったのだが、その表紙に彼女が出ていた、というわけなんだ。それに僕はなぜだか惹かれてしまってね、ついその雑誌を手にとってしまった。そして表紙モデルの名を確かめると、雑誌を元の位置に戻したってわけだ。(買ったりはしないよ!)で、そのモデルの名(つまりそれが楠城華子だったわけだ)をネットで検索してね、彼女の公式サイトを見つけ、そのなかに彼女のブログもあったわけだ。(彼女は自ら芸能事務所を経営しているらしい!)

で、その楠城華子がブログに、いま『カラヤンとフルトヴェングラー』を読んでいる、と書いていたわけだ。そのときは「ああ、幻冬社の・・・」と思った程度だったが、それから数日するうちに、なぜだかこの本が読みたくなってきた。そこでいそいそと本屋に出かけて買い求めてみたわけだ。(本を介して楠城華子と繋がりたかったのかもしれない。いわゆる仮想現実というやつか!?)

本は面白い。文章は平明で(かつて君が書いていたものとは全く違って!)、読みやすい。筆法も中立的で(これも君の書くものと違って!)、読んでいて眉に唾したり不快感を催したりすることもない。内容もフルトヴェングラーとカラヤンの確執だけではなくて、その背景にあるナチ政権との関係も浮き彫りにされているし、そうそう、それにチェリビダッケが絡んでくるんだ!(君はチェリビダッケが好きじゃなかったか?)この一種異様な三角関係というのは、きっと物事をややこしく考えるのが好きな君の気に入るだろうと思って、メールしたわけだ。

DOS/V君の質問に「?」と応じた君のことだから、もう音楽なんか聴いてないだろう?でも、この本を読むと、また聴きたくなるかもしれないぜ。ちなみに僕は今、久しぶりにブルックナーを聴きながらこれを書いている。あいにくフルトヴェングラーでもカラヤンでもないがね(チェリビダッケでもない!)。朝比奈隆の大阪フィル。ブルックナーゆかりの「聖フローリアン」での演奏だ。というか、このCDはずいぶん前に君から借りたものだったね。いつまでも借りたままですまない。実はそのことを言いたくてメールした。ま、当分君とは会うこともないだろうから、もうしばらく借りたままにしておくよ。もしかすると、このCDは一生僕のところにあるかもしれないが。まぁ、そこはそれ、例の僕のわがままだと思って許してくれたまえ。

追: 君のブログ、ときどき読んでいる。相変わらず馬鹿げたことばかり書いてるなぁ。でも、それはそれで愉しんでいるので、ご心配なく。この調子で書き続けてくれたまえ。ご家族のみなさんにもよろしく。いつかまた鳥取にお邪魔するかもしれない。


なんちゅうことだ!つべこべ言わずにCD、返さんかい!(すっかり忘れとったがな・・・)

竜飛岬君は青森出身なのですが、辺境大学で知り合って以来の友人で、ちょっと変わった人です。文中にもあるとおり、学生時代はしばしば彼に誘われるままに演奏会めぐりをしたものですが、あれは貧乏学生のタマゴにとってかなり痛い出費でしたわい。タマゴは演奏会そのものよりも、どちらかといえばその前後の飲み食いに興味があったわけですが。

彼は学校を出てから、あの超売り手市場であった時期に就職もせず、しばらく放浪の旅を続けとりましたが、その頃一度だけ鳥取にも立ち寄ってくれたことがあります。そのとき彼に貸したのが例のブルックナーのCD。その彼も10年ばかり前から東京に落ち着いとるようですが、なにを生業としとるかは定かでないです。どうせ怪しい仕事だらぁ、とタマゴは睨んどりますが。

竜飛岬!CDはもうええ!お前にやる!そんかわり、警察のお世話になるときは(楠城華子という人の身に危険が迫っとるような気がしてならん)、共犯者としてタマゴの名を挙げたりせんでごせ!頼む!タマゴの望みはそれだけだ!(♪ご覧、あれが竜飛岬、人の道はずれと~♪)

それと、タマゴがチェリビダッケが好きだった、というのは君の勘違いだ。そこまでタマゴはクラシック音楽が好きだったわけだぁない。ただ、君につきあっとっただけなのだよ!我ながら、全くお人よしであったわいな、あの頃は。(いまはそー簡単には騙されん!←と思っとるモンが一番騙されやすいだで)

カラヤンとフルトヴェングラー

カラヤンとフルトヴェングラー

  • 作者: 中川 右介
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 新書


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okko

こんなに長いメールを送る人がいるとはとてもしんじられんでね、また、騙されとることを承知の上でのコメントですで。
フルトヴェングラーは、よく兄が真似をして、ハタキをタクト代わりにして酔いしれておりました。カラヤンよりは年上でしたな、たしか?
そんなんが本になること自体が、現代では起こりえない現象のように感じられます。 おお、クラシックね、任して頂戴!竜飛岬も任してごせ。
たまごさんのブログ紹介したんだけど、「行って見たら、あんまり長いので帰ってきた」という報告がありました。
当分、二人三脚で、記事数、ナイス数平行線の記録を継続しませう!
by okko (2007-04-03 11:10) 

温泉たまご

いやいや、世の中にメールのマナーを無視して、ひたすら長いメールを寄越す人はいるもので、先日もある先輩から一切改行のない長いメールを受信したばかりです・・・・。
自分のブログを棚にあげて言えば、ああいうメールは実に眼が疲れます。読む気が失せた、というokkoさんのお知り合いの方の気持ち、よくわかります。(タマゴブログには「読む気を喪失させる!」という、わけのわからん狙いもあったりしますが)
かく言うタマゴも、恩師とメール交換をはじめたばかりの頃、いきなり200行近いメールを送って恩師を驚嘆させたことも。律儀な恩師は行数をお数えになり、日記に「今日、タマゴ君から200行にわたる長いメールが届く!」とお書きになったとか。
調子づいたタマgゴは、その後もエスカレートする一方で、ついに恩師に「すまん、パソコンが壊れた。もうメールが読めん」と根を上げさせる始末。
で、ブログをはじめた理由のひとつが、「あまりに長いメールで知人・友人に迷惑をかけないため」だったりするという・・・・。
それにしても。今年はブログを短めに!という年頭所感はなんだったのでせうか?こまめに更新する!というのも・・・。しばらくネット接続しないうちに管理ページの様子まで変わっていて・・・・う~ん・・・・。
by 温泉たまご (2007-04-08 10:27) 

侘び助

年寄りの目には、ちょいと酷(行が追いかけられへん)
目薬~さそう!!
by 侘び助 (2007-04-15 10:00) 

温泉たまご

詫び助さん、こんにちは。
ご安心ください。
タマゴも読み返そうとして、5行目で目薬をさしました。
作成画面ではもっとデカイ字だったはずなのに・・・・。
by 温泉たまご (2007-04-15 22:23) 

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