生き馬の目を抜く

今を去ること20年ほど前、進学に際し尊敬する恩師（略して「尊師」）、国語のHG先生のもとを訪れたところ、「東京は生き馬の目を抜くところだから用心するように」との教えを賜りました。戦慄しました。東京はなんちゅう恐ろしいところだ、と。卵、文字通り「馬が生きたまま、目を刳り抜かれる」場面を想像していたのです。我ながら賢明であった、と思うのは、それを口に出して言わなかったところ。そんなことをポロッと喋っていたら、きっと先生に「この愚か者め」と嘲笑されたに違いありませぬ。

しかし、「住めば都」とはよく言ったもので（実際に東京は都なのですが）、知り合いが増えるにつれ、なかなか人情味のあるところであることがわかりました。そんな或る日、卵は迂闊にも京王線の電車のなかに忘れ物をしてしまったのです。忘れ物は鞄。一切合財が入った鞄。それなしでは明日から生活していけない、という鞄。さすがに諦めましたね。「東京は生き馬の目を抜くところ」というHG先生の教えが脳裡を駆け巡りました。

諦めモードで、一応、京王線新宿駅の遺失物係を訪ねてみると。驚いたことにありましたがな！鞄が。ナカミもそっくりそのまま届けられてました。財布のなかの現金やカードもすべて手付かず。「よくも、まぁ・・・」と呆れると同時に、親切に届けてくださった方に感謝しましたが、「東京もなかなか捨てた街ではない」と思うばかりでなく、「卵の悪運もなかなか捨てたものではない」と思ってしまったのは、いつもの身勝手。

HG先生も定年退職されて、およそ10年。今は晴耕雨読の日々だそうです。お会いすることは滅多にありませんが、年賀状のやりとりだけは続いています。今年、「高校時代の不勉強を恥じつつ、昨年来、徒然草を読んでおります」と認めたところ、お返事に先生独特の金釘流の文字で「小松英雄『徒然草抜書』を読むべし」とありました。いつまでも先生の生徒でいられることの喜びを噛み締めつつ、よくよく考えてみたら、先生の教わったのは高校1年の現国だけで、古典を教わったことは一度もありませんでした。（爆）

「始めるに遅すぎるといふことはない」と言います。「古典の味わいは不惑に達して後、はじめてわかる」とも。事実、徒然草はべらぼうに面白いのです。

コメント 5

うちの８４歳になるhorigon父も、旧制高校時代に取った杵柄か、未だに
漢詩集から経済ジャンルの本まで幅広く晴耕雨読の生活を
送っています。
それに引き換え、不惑を遥かに過ぎても、怪しげな本やビデオにしか
関心を示さない息子は、友達と恩師運に恵まれなかったのでしょう。（´ヘ｀；）

by horigon (2008-03-04 08:03) 

ナイスがどうしても、イヤだと、首を横に振って付いてくれませぬ。
ブログ騒動も何処吹く風、泰然自若、馬耳東風、久々の記事、お待ちしておりましたで。
キーワードナンやらの設定にされたのですか？
緑色の文字にカーソルあわせると、金融業だの、塾だのの広告が・・・・まあ、タマゴさんらしくていいか。
さて、今日はブログは止めて、源氏物語でもひも解くとするかッ！
by okko (2008-03-04 09:24) 

ブログ読み進みカーソルが有るところに行くと
広告文が？？と思っていましたが、これも新しくなったという事？
何だか純粋な文が汚れるみたい・・・
by 侘び助 (2008-03-04 09:33) 

horigonさん。
旧制高校、憧れるーっ！デカンショ、ストーム、寮雨・・・。ぜひお父上に旧制高校の思い出話を伺ってみたいものです。旧制高校ブログを開設していただけないでせうか？どうやら複数ブログの開設も可能になったようでもありますし。

okkoさん。
ブログ騒動・・・はて？と思っていたら、いつのまにかソネブロが刷新されとりますがな！新規作成画面の様子が変わってたのはそのためでしたか。キーワード設定とか、なにも弄ってないのですが（弄れない）、たしかに緑色の文字がありますな。解除方法を学ぶのに、たぶんあと半年はかかると思います。

侘び助さん。
卵の文はもともと汚れてはおりますが・・・。てっきり、キーワード繋がりで他のブログとリンクするのか、と思いましたらば、そうではないのですね。無料ブログだから仕方ないか、とも思いますが、少なくとも卵ブログから飛んで、何かを買おうという気を起こす人はないと思いますけどねぇ・・・。
by 温泉たまご (2008-03-04 23:49) 

匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_^;)ありがとう。。。
by バーバリーブラックレーベル (2013-08-03 02:14)